1. はじめに
2026年3月25日~4月5日、バンコク郊外の「インパクト・ムアントンタニ展示場」にて第47回バンコク国際モーターショーが開催されました。本イベントは、東南アジア最大級の自動車・バイクの展示即売会として定着しており、来場者数が昨年比20万人増の180万人に達しました。EVを中心とした新技術や市場への関心が一段と高まり、中国系メーカーがますます台頭する昨今の自動車市場動向についてレポートします。
2. 中国EVメーカーの攻勢
【バンコク国際モーターショーHPより事務所作成】
2026年会期中の予約販売台数は合計132,951台と大きく伸長し、過去最高となりました。ブランド別販売状況では、上位10ブランドのうち中国系が8ブランドを占め、日系はトヨタとホンダの2ブランドにとどまりました。ジェトロのメーカー国籍資本別集計によると、中国系ブランドの予約数は90,885台で全体の68.1%を占め、日系の36,346台(27.3%)を約2.5倍の規模で上回りました。
EV販売を後押しした要因のひとつに、開催時期が中東情勢の緊迫化と重なり燃料価格が上昇したことが挙げられます。軽油価格は2月末の29バーツ/ℓから4月上旬には50バーツ/ℓへと約1.7倍も上昇しており、EV車への関心を押し上げた可能性があります。
3. 市場における日系シェアの低下
タイの2025年新車販売台数は、前年比8.5%増の621,166台と3年ぶりに前年実績を上回りました。しかし、日系メーカーの販売シェアは69.3%まで落ち込み、ついに7割を割り込みました。2010年代には日系シェアは9割を超え、筆者が赴任した2022年の段階でも85%ありましたが、この3年間で15ポイント以上も急落したことになります。一方、中国勢は主要6社で18.3%を占めており、未公表分を含めると全体の2割を超えているとみられます。
バンコク日本人商工会議所自動車部会は、2026年の新車市場規模を前年比3%減~5%増の「年間60万~65万台」と見込んでいます。よって、今回のモーターショーにおける予約販売で、年間見通しの約2割が販売された計算になります。足元の趨勢を踏まえると、2026年の年間販売シェアでも中国勢がさらに躍進することが推察されます。
4. おわりに
会場で実際に中国メーカーEVの運転席に座ってみましたが、操作や情報表示はすべてタッチパネルに集約されており、一般的な日本車の内装とは異なる様相でした。また、モーターショー初参加の中国EVブランドからは、蛍をモチーフとした暗所で車体が光る車両の紹介があり、特徴的な車体デザインをはじめ、タイ市場を意識し差別化が図られている印象でした。
中東情勢が緊迫し、燃料不足への懸念が高まる中、アヌティン首相は3月、BYDの車を運転して首相府に向かう姿を公開しました。4月には、長期的なエネルギー負担を軽減するため、公用車の使用に関するガイドラインの見直しを指示し、EVの利用促進を求めました。欧州では内燃機関車の段階的廃止計画の要件が緩和されるなど、EVシフトの流れが変わりつつありますが、タイでは当面、EVシフトの流れが続く見込みです。
<ご注意>
文中意見は筆者の個人的見解であり、北陸銀行としての見解の反映ではありません。当レポートは作成時点の経済状況に基づき、情報提供のみを目的に作成したものです。記載内容についてはご利用者の判断と責任のもと、ご利用くださいますようお願いいたします。

