1. はじめに
高層ビルが次々と建設され、無数のバイクが行き交うホーチミン市(旧サイゴン)。その活気あふれる街の中心部には、長く受け継がれてきた「緑の回廊」が息づいています。人々にひと息つける空間を与えてくれる街中のオアシスをご紹介します。
2. サイゴンを象徴する並木道
ホーチミン中心部の通りには、1860年代のフランス統治期に植えられた木々が立ち並び、160年以上にわたって街の変遷を見守ってきました。
メインストリートであるドンコイ通りでは、古くから写真に収められてきた姿そのままに、美しい並木が懐かしいサイゴンの風景を今も変わらず伝えています。ヴォー・ヴァン・タン通りでは幹が直径1メートルを超える大木が、チュー・マン・チン通りでは高さ20メートル近い木々が、それぞれ道の両側に並び、強い日差しから市民を守り快適な空間を作り出しています。また、グエン・ビン・キエム通りでは、1890年代に植えられた巨木が100年以上の記憶をつなぐ存在として立ち続けています。
整然と並ぶ街路樹の中には、ベトナムの伝統的な「Dầu(ヤウ)」の巨木も約3,000本あり、人が腕を広げた大きさを超えるほど太い古木もあります。これらの樹木は、暑さを和らげ人々を癒やすだけでなく、世代を超えて文化や歴史を伝えてきたことから、『サイゴンの緑の肺』と呼ばれています。
そのほか、聖母マリア教会から統一会堂周辺に広がる「4月30日公園」や「タオダン公園」でも、青々とした木々がつくる日陰が都会のオアシスのように人々を迎え、生活を支えています。タオダン公園周辺に長年暮らす住民は、「並木のある風景は、ここで暮らしてきた自分の人生とサイゴンを象徴する情景です」と話していました。
3. おわりに(「守り、増やす」次の百年へ)
受け継がれてきた並木道を未来へ繋ぐため、ホーチミン市では街路樹の管理・保全を最重要課題の一つに位置づけています。剪定や枯れ枝の処理、高木の高さ調整、老木・病木の入れ替えを定期的に行い、安全で健やかな都市緑化を維持しています。
一方、緑地はまだ十分とは言えず、並木が少ない通りも見られます。建設局のデータによると、現在の街路樹は約11万本で、一人当たりの緑地面積は0.5㎡にとどまっており、専門家が推奨する12~15㎡には到底及ばない状況です。
近年は新たな樹種の植栽が進み、黄色い花の「ボーカップ・ヌォック」や、春にピンクの花を咲かせる「ケンホン(トランペットツリー)」などが街を彩っています。古木を守りながら新しい緑を増やす活動を積み重ねていくことによって、サイゴンの「やさしさ」のバトンが次世代へ引き継がれていきます。
<ご注意>
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