1. はじめに
2026年1月1日、「中華人民共和国増値税法」と関連の実施条例が正式に施行され、同時に、1994年から続いた「中国増値税暫定条例」が廃止されました。国内税収の約38%を占める増値税(付加価値税、VAT)が正式に法制定され、大幅な制度転換となりました。
本改正は実務への影響が大きいことから、1月下旬以降、大連の税務局では企業経営者や経理担当者向けの「増値税法と実施条例」に関する研修が実施されました。従来の13%、9%、6%の3段階の基本税率に変更はありませんが、越境取引、混合販売、みなし販売、仕入税額控除などに関するルールの見直しがありました。
今回は主に、日本企業にも影響が及ぶ越境取引の変更点についてご紹介します。
2. 増値税とは
中国の「増値税」とは、中国国内で物品、サービス、無形固定資産、不動産、および輸入貨物を販売する企業と個人に対し、その流通過程で新たに創造された付加価値部分に対して課す税金です。内容によって3段階の税率が適用され、一部ゼロ税率の取引があります。
一方、小規模納税者には簡易課税方式が適用され、徴収税率は3%の固定となりますが、仕入税額の控除はできません。また、不動産賃貸、労働派遣などに従来適用されていた5%税率は廃止されました。
3. 越境取引における課税判定基準の変更(「消費地原則」へ)
今回の改正で外国企業に最も影響が大きいのは、越境サービス・無形固定資産に関する課税の考え方が、従来の「購入者が中国国内にいるか」という基準から、「中国国内で消費・受益されるか(消費地原則)」へ転換した点です。
課税・免税の扱いは、以下のパターンに整理することができます。
≪海外企業への実務アドバイス≫
以下の点について、注意・整備が必要です。
① 契約条項の改定
「海外現場即時サービス」、「海外研究開発・成果の国内利用サービス」という文言を契約上明確に区分し、税負担・源泉徴収責任を明記する。
② 価格設定の見直し
海外での成果が中国国内に帰属する型(成果落地境内型)の課税業務については、事前に6%の源泉増値税を原価計上し、中国向けの見積もりを再作成する。
③ 証憑書類の保管
免税となる海外現地サービスは、実施地証明・渡航関連書類・現地作業記録を保管する。
④ 財務決済の調整
課税案件は、契約書に税込価格・税抜価格を明記し源泉徴収税の決済方法を明確にする。
⑤ 税の納付方法
海外企業が中国国内で課税取引を行う場合、国内購入者が増値税を源泉徴収する。あるいは、国内代理人に委託し、申告・納付する。
4. おわりに
今回の増値税法改正は、中国の増値税制度が国際基準の「消費地課税原則」に整合される重要な転換点となりました。改正により、一部業務で従来の課税・免税の判定が逆転する可能性もあります。今後、中国との貿易外取引においては、サービスが中国国内で消費・受益されるかが増値税課税判断の基準となります。
本稿は一般的な情報提供を目的としており、個別案件の税務判断につきましては専門家へのご相談をお勧めします。
<ご注意>
文中意見は筆者の個人的見解であり、北陸銀行としての見解の反映ではありません。当レポートは作成時点の経済状況に基づき、情報提供のみを目的に作成したものです。記載内容についてはご利用者の判断と責任のもと、ご利用くださいますようお願いいたします。

